Wi-Fi 7とWi-Fi 6の違いをこの記事で分かる (後編)

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概要:

Wi-Fi 7がリリース寸前ですが、注目すべき最新ニュースはあるのでしょうか?重要な情報のひとつは、Wi-Fi 7技術においてマルチAP協調・連携技術が廃止されたことです。現時点では、Wi-Fi 7の速度向上以外に、MLO、Preamble Puncturing、MRUという3種類の技術に反映されていますので、この記事ではおもにそれらをご紹介していきます。

 

1.Wi-Fi 7の主要な技術特徴

 Wi-Fi 7の主要な技術特徴は多数ありますが、文章の長さも考慮に入れることで、本記事ではMLO、Preamble Puncturing、MRUの3種類の技術のみご紹介します。

なお、Wi-Fi 7に関する技術基準草案には、もともと「マルチAP連動技術」が記載されていますが、最新の基準には削除され、Wi-Fi 8に再び登場される見込みです。そのため、本記事ではこの技術に関しての紹介は。

 

1.1 Wi-Fi 7技術:マルチリンクオペレーション(MLO)

 マルチリンクオペレーション(MLO)は英語で「Multi-Link Operation」です。同じAPの中に、2.4GHz、5GHz、および6GHzの無線周波数チップが存在しています。APの複数のチップが、一つのSTAと同時にリンクで通信することが可能です。MLOはMAC層の技術であり、周波数帯をまたがって複数のリンクを束ねて一つのバーチャルリンクを構成できます。

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図8:MLO技術説明(MLO技术说明)


MLOには2種類の動作モードがあります。

 一つは、マルチ送信単一受信モードで、マルチリンクで単一のメッセージを送受信することを指します。システムが自動的に最善のリンク選択して送受信を行います。たとえば、2.4GHz帯で受けた干渉が多い場合には、自動的に干渉が少ない5GHz帯に切り替えられます。常に最適なルートを選択した上で通信するので、遅延を大幅に短縮する効果があります。多くの端末が接続された高密度な環境の中でこのモードを使うと、送受信の信頼性と品質を向上することもできます。

Ruijie Networksが実際に実行したテストによると、MLO技術が採用されたWi-Fi 7デバイスが同時に5Gと6Gの2つのリンクを構成し、平均遅延時間がWi-Fi 6の84msから6msに大幅に短縮されました。10ms以内に抑えられた遅延が、もはや有線ネットワークの遅延レベルの近いです。

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表5: Ruijie NetworksがMLO技術を利用して行った遅延短縮テスト


二つ目は、マルチ送受信モードで、同じメッセージをマルチリンクに分けてから、個別に伝送することになります。1部のデータを複数部に分けて、MLO技術によってマルチリンクで同時伝送し、STAが受信したら統合することで、伝送効率を大幅に向上できます。

読者の皆さんは、ここで紹介されたMLO技術と、この前に紹介されたMU-MIMO技術にはどんな共通点や相違点があるのか、疑問を持っているかもしれません。

共通点

 MLO技術とMU-MIMO技術のどちらもが、同じAPとSTAの間でマルチリンクを構築し、同時に送受信することができます。

相違点

 MU-MIMO技術は、AP内の同じ無線チップに限られています。例えば、16ストリームとは、同じAPの中の一つの無線チップが同時に外部向けに16つの通信ルートを構築できることを指します。もちろん、この16の通信ルートは、一つまたは複数のSTAと構築することができます。

 

MLO技術は、同じAP内の複数の無線チップが、同時に一つのSTAと通信ルートを構築することを指します。

これらの概念を別の方向で考えてみましょう:一つのAPと一つのSTAの間に、鉄道、道路、及び航空という3種類の交通手段が存在するとします。三つの手段を使って同時に通信を行うのがMLO技術です。単に1種の手段が使われ、例えば道路の場合に16層の道路が通信可能なら、MU-MIMO技術です。

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図9:MLO技術は道路、鉄道、航空という3種類の交通手段による同時データ伝送に似ている


1.2  Wi-Fi 7技術:マルチリソースユニット/Multi-RU

 Multi-RUは「Multiple resource unit」の略で、周波数のリソース使用率を向上するための技術です。図十二の左グラフはWi-Fi 5のOFDM動作モードで、横軸が時間領域、縦軸が周波数領域です。一つの最小時間単位内に、ひとつのチャンネルが一名のユーザーにのみデータを送信します。これは、ユーザーのデータがチャンネル全体を覆わうかどうか、リソースを無駄にするかどうにかかわらず、一名のユーザーは一単位時間内で全チャンネルと専用することを意味します。

右にあるグラフはWi-Fi 6のOFDMA動作モードで、リソースユニット/RU(Resource Unit)のコンセプトが導入されました。20MHzのデータが同じ時間単位で複数のRUに分けられます。各RUには一定の数のサブキャリアが含まれ、ひとつのRUが一名のユーザーにデータを送信します。これでひとつの最小時間単位の中で、同時に複数名のユーザーに送信することによって、リソース使用率を大幅に向上しました。


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図10:Wi-Fi 5のOFDMおよびWi-Fi 6のOFDMA技術


一つのRUの中のサブキャリアの数はランダムに組み合わせられたのではなく、RUの固定組み合わせがWi-Fi基準により規定されています。主に、26-tone RU(つまり26個の副搬送波が一つのRUを組んだこと)、52-tone RU、106-tone RU、242-tone RU、484-tone RU、996-tone RU、1992-tone RUが挙げられます。

Wi-Fi 6においては、一名のユーザーは一つのRUにのみ対応します。Wi-Fi 7では、一名のユーザーに複数のRUを割り当てるMRUのコンセプトが提案されました。では、MRUは具体的にどのように機能するのでしょうか?

例えば、20MHzのチャンネルは、3名のユーザーに使用されます。Wi-Fi 6での最大リソース使用率は以下の通りです:1名のユーザーに106-tone RUを割り当て、2名のユーザーにそれぞれ52-tone RUを割り当てます。全部で210個のサブキャリア(tone)が使用され、24個のサブキャリアが無駄になりました(一つの20MHzチャンネルでは全部で234個のサブキャリアがあります。詳細は「Wi-Fi 7とWi-Fi 6の違いをこの記事で分かる (前編)」の「Wi-Fiに関する基礎概念」を確認してください)

現在、Wi-Fi 7で採用されたMRUにより、1名のユーザーに106-tone RU+52-tone RU(1名のユーザーに2つのRUを割り当てる)、他の2名のユーザーに相変わらず52-tone RUを割り当てます。これで、20MHzチャンネルのリソースを最大限に利用し、リソース使用率を大幅に向上することによって、データ伝送速度が速くなり、遅延が短縮されます。

注意が必要なのは、任意の二つのRUが一つのMRUを構成できるわけではなく、それを実現するには条件を満たす必要があります。Wi-Fi 7基準では、RUが大RUと小RUに分けられ、同じカテゴリー内のRUだけがMRUを組み合わせることが規定されています。これは、同じ大RU同士、または同じ小RU同士に限ってMRUを構成できることを意味します。

小RU:26-tone RU、52-tone RU、106-tone RU

大RU:242-tone RU、484-tone RU、996-tone RU、1992-tone RU

 

1.3 Wi-Fi技術:プレアンブル・パンクチャリング

 「プレアンブル・パンクチャリング」、または「Preamble Puncturing」(以下は略してPuncturing)は、Wi-Fi 6基準でオプション技術で、コストが高いため、一般製品の実際機能にはだいたい搭載されていません。Wi-Fi 7の場合は、Puncturing技術は必須規格に指定され、各製品に必ず搭載しなければならないことになります。

この前に、チャンネルバンディング技術を使って速度を向上することを紹介しました。例えば、8つの20MHzチャンネルを1つの160MHzチャンネルにバンドルします。

チャンネルバンディングは、プライマリー・チャンネル(Primary channel)とセカンダリー・チャンネル(Secondary channel)に分類されることができます。40MHzにバンドルされるチャンネルでは、Primary20チャンネルとSecondary20チャンネルがあります。この2つのチャンネルが、80MHzにバンドルされたPrimary40チャンネルを構成し、残りはSecondary40チャンネルを構成します。以上の全てがPrimary80チャンネルを構成し、残りはSecondary80チャンネルを構成します。


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図11:160MHzチャンネルをバンドルするプライマリーチャンネルとセコンダリーチャンネルイメージ図


チャンネルバンディング技術の元々のプロトコルでは、2つの原則がありました。一つ目は、連続したチャンネルだけバンドルできることです。二つ目は、チャンネルバンディングモード動作中に、プライマリーチャンネルがクリーンで干渉がない場合に限ってデータを伝送できることです。

たとえSecondary20が干渉を受けた場合、 Primary40の全体がクリーンではないチャンネルになり、Secondary40はデータを伝送できない状態になります。さらに、Primary80もクリーンではないため、Secondary80でもデータ伝送が不可能になります。最後に、160MHzにバンドルされたチャンネルが、 Secondary20の20MHzチャンネルのうちの一つが干渉を受けたことで、 突然20MHz(Primary20)でのデータ伝送に低下し、8分の7のチャンネルリソースが浪費されてしまいます。

Wi-Fi 7のPuncturing技術は、まさにこの問題を解決するためです。

上記と同じ例ですが、Secondary20チャンネルが干渉を受け、Puncturing技術によってSecondary20チャンネルを直接パンクチャリングしてシールドし、残りの140MHzチャンネルがバンドルされて継続的にデータを伝送します。ここで、まだ160MHzのチャンネル・バンディングモードで動作されますが、Secondary20チャンネルをNull(空)の状態に置きます。このような例ではPuncturing技術が紹介されることで、チャンネル使用率が以前の7倍に上がります(140:20)。


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図12:Puncturing技術が採用された160MHzバンドルチャンネル


Puncturing技術の核心は、非連続チャンネルの使用率の向上に焦点が当てられ、実際のレートを高めて遅延を短縮する効果があります。


2. Wi-Fi 7技術の応用シーン

 Wi-Fi AllianceがWi-Fi 7の基準を発表する際に、応用シーンについて明確な期待が示されました。例として、AR/VR/XR、家全体のビデオ配信、ゲーム、リモート医療、企業製造、バーチャルトレーニング、教育、ホテルなどが挙げられます。

ここまで読んだ読者さんも、きっとWi-Fi 7に大変興味を持っているでしょう。Wi-Fi 7の技術問題や応用シーン、マーケットなどについて、ご遠慮なくコメントを残したり、議論と意見交換をしでください。

 

後編のまとめ:

 「Wi-Fi 7とWi-Fi 6の違いをこの記事で分かる」(後編)では、Wi-Fi 7の最新情報に合わせて、Wi-Fi 7技術におけるMLO、Preamble Puncturing、及びMRUといったWi-Fi 7の主要技術特徴を反映する三つの技術に焦点を当てて紹介しました。

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